知らない、映画。

在英映画学部生のアウトプット

Entries from 2022-06-01 to 1 month

【時事】東京オリンピック: Side B を見て(2022)/批評が出来ない批判家たち

29 (Wed). June. 2022 参院選の真っ只中、政治的には何かと騒がしい季節だが、その渦中で更なる論争を呼んでいるのが河瀬直美監督による東京オリンピック2020公式記録映画である。 特に Side B は「東京オリンピックの裏側を明らかにする」と予告で宣伝して…

【時事】東京オリンピック: Side A を見て(2022)/映画を見ない有識者たち

27 (Mon). June. 2022 酷評に次ぐ酷評で興行的にも大失敗している東京オリンピック2022公式記録映画。トップガン:マーヴェリックや映画 五等分の花嫁に及ばないことはある程度想定されたこととして、峠 最後のサムライや妖怪シェアハウスにまで大きく水をあ…

【映画解説】ジャンプスケア(jump-scare)の意味と機能/死霊館(2013)

25 (Sat). June. 2022 本日のテーマは現代ホラー映画、そしてホラーゲームで最も大切な技術となっているジャンプスケアである。ここには先日の記事で解説した視線の一致と誘導が非常に大きく関係している。 近年では何かと批判されることも多いジャンプスケ…

【映画解説】編集の基本、視線の一致と誘導(eye-trace)/聖なる鹿殺し(2017)

24 (Fri). June. 2022 映画の本質は編集にある、というテーゼが一応映画学上では認められている。芸術の本質など時代ごとに変わる曖昧なものでしかなく、特にそれが映画の様な総合芸術では一際曖昧にもなるのだが、それでも映画に対する編集の大切さは十分強…

【映画解説】脚本執筆の失敗例/鑑定士と顔のない依頼人(2013)

20 (Mon). June. 2022 過去3回に渡って脚本が映画内に於いて如何に機能するものか観察してきたが、最終回の本日は脚本の失敗例についてである。 脚本はプロダクションは勿論プレプロの過程で重要な役割を果たし、技術的な程度を保障する上で必要不可欠である…

【映画解説】現代的脚本術に見られる主題の重要性、創造を支配する理性/TITANEチタン(2021)

19 (Sun). June. 2022 既に述べた通り、今日の時事が与える脅威はフィクションのそれを凌駕してしまっている。だからフィクション(それが映画にせよ文芸にせよ)は単に脅威を提出するだけでなく、それを超えて安息や恐怖などの感情を生み出すことに存在意義…

【映画解説】自己破壊的な脚本術、或いは不条理映画/欲望(1966)

17 (Fri). June. 2022 先日の記事に引き続き、本日も脚本について検討する。最も基本的で王道と思われるハリウッド流古典的脚本術から始めて、本日は脚本(物語)を破壊する試みについて見ていこう。 予め断っておかなければならないが、今回は脚本を持たな…

【映画解説】ハリウッド流古典的脚本術/お熱いのがお好き(1959)

16 (Thu). June. 2022 『ル・シッド』論争についてご存知だろうか。古典主義時代の17世紀フランスでピエール・コルネイユが著した劇『ル・シッド』が三単一の法則(時・場所・筋の一致)を無視したことから、両派分かれて展開した議論のことである。 当時の…

【映画解説】ミザンセン(mise-en-scene)の意味と機能/ドリーマーズ(2003)

13 (Mon). June. 2022 カメラムーブメントについて学び、カットとは何か学習した所で、次の様な疑問が浮かんだのではないだろうか。 確かにカメラの動かし方、シーンの切り方は分かった。しかし映画は総合芸術で様々な要素が組み合わされて出来上がっている…

【映画解説】カット、ショット、シーン、シークエンスの意味/ヒストリー・オブ・バイオレンス(2005)

10 (Fri). June. 2022 この映画は斬新なカットで面白かった。あのショットはどうやって撮影したんだろう?泣けるシーンがあって、大変感動した。全くつまらないシークエンスがあった。 映画を分析したり批評したりする上ではどれも一般的な表現だが、果たし…

【映画解説】カメラムーブメント、push-inとpull-out/20センチュリー・ウーマン(2016)

8 (Wed). June. 2022 先日の記事に引き続いてカメラムーブメント、特にpush-in shot と pull-out shot について解説する。pull-out shot の代わりに push-out shot という呼称も耳にしたことがあるが、恐らくは誤りだと思われる。少なくとも pull-out shot …

【映画解説】基本のカメラムーブメント、スタティック・パン・ティルト/フラワーズ・オブ・シャンハイ(1998)

6 (Mon). June. 2022 これまで映画の見方、制作過程、そして基本的な映画の形式と続けてきたが以降いよいよ本格的な制作技術について見ていきたいと思う。 一番最初に取り上げる内容はカメラムーブメント、特に基本となる3つのムーブメントについて紹介する…

【映画ニュース】スペイン映画業界研究、映画制作・ロケーションの拠点として

5(Sun). June. 2022 スペイン映画というとどういった映画を思い浮かべるだろうか? オール・アバウト・マイ・マザー、ボルベール<望郷>、REC、オープン・ユア・アイズ、それでも恋するバルセロナ...etc. ハリウッド映画は勿論フランス映画や韓国映画と比較…

【映画解説】映画形式の機能と批評の原則、随伴現象説の意味

3 (Fri). June. 2022 先日の記事を読んで聡明な読者諸氏は1つの疑問を持たれたことだろう。 彼は映画形式としてのスタイルと作家性としての岩井俊二のスタイルを同列に語っているが、両者は別個の存在であるのではないだろうか?詰まり映画が映画であるため…

【映画解説】映画形式、スタイルとジャンルはどう違うのか、脱構築/Love Letter(1995)

1 (Wed). June. 2022 以前「映画は総体として見られなければならない」と書いたと思う。 また「映画のジャンル分けは主に社会学的な観点と、マーケティング上の観点から行われる」とも書いた。 所で映画の総体とか形式、そしてジャンルとは具体的に何を指す…