知らない、映画。

在英映画学部生のアウトプット

【映画解説】カメラムーブメント、トラッキング・ショットの意味/マンハッタン(1979)

29 (Fri). July. 2022 一番手っ取り早い映画の作り方、それは「追いかけっこ」である。良い映画には必ず練り上げられたキャラクターが登場するし、カメラは彼らを明らかにする様に、彼らの物語を伝える様に撮影する。所で映画の物語形式の基本は行動(action…

【映画解説】カメラムーブメント、ドリー・ショットの意味/ボーイ・ミーツ・ガール(1984)

27 (Wed). July. 2022 ドリー・ショットという言葉は嘗ては存在しなかった。以前はドリーを使って撮る=トラッキングだと考えられていたからだ。だがドリー(dolly)という道具そのものが進化し、トラッキング・ショットの概念が拡大され、両者は最早同一の…

【時事】レア・セドゥの魅力と彼女が告発する日本の広告業界の問題

25 (Mon). July. 2022 現役トップの女優といったら誰になるだろう?積み上げてきたキャリアを考えればジュリア・ロバーツやマリオン・コティヤール、レガシーと影響力という観点ではメリル・ストリープやハル・ベリー、ニコール・キッドマンも素晴らしいし、…

【映画解説】メソッド・アクティングの罪と性的暴力/ボーイズ・ドント・クライ(1999)

22 (Fri). July. 2022 演技にリアリズムを獲得する上でメソッド・アクティングが如何に強力で有効なツールか、このことは既に十分論じたつもりだ。 sailcinephile.hatenablog.com 理想的な演技が登場人物と俳優自身の境目が消失する様なものであるとする時、…

【映画解説】映画におけるメソッド・アクティングとは何か/ディア・ハンター(1978)

20 (Wed). July. 2022 ジャック・ニコルソンに始まりヒース・レジャー、ホアキン・フェニックス、バリー・コーガン、アニメ版ではマーク・ハミルと数々の名優が挑戦してきた難役、ジョーカーだが、その中で一際酷評されたのがスーサイド・スクワッドでその役…

【時事】ミレニアル vs Z世代/映画を見るなんて時代遅れ!?

18 (Mon). July. 2022 遡ること20年前、2002年の6月4日、アヴリル・ラヴィーンの記念すべきファーストアルバム "Let Go" が発売された。今年は20周年を記念するリマスター版も発売されたが、ある海外のメディアがこれに因んで興味深い記事を発表している。 …

【映画解説】上手い演技とは何か、映画に於ける演出/寝ても覚めても(2018)

15 (Fri). July. 2022 演技の上手な俳優と言えば誰が真っ先に思い浮かぶだろうか? ロバート・デ・ニーロ、メリル・ストリープ、吹越満、ジュリエット・ビノシュ、樹木希林、デンゼル・ワシントン、ダイアン・キートン.... 人によって挙がる名前はまちまちだ…

【映画解説】映画批評に関する幾つかの覚書/ドゥ・ザ・ライト・シング(1989)

11 (Mon). July. 2022 一応物を書いて世に出す身分であるから(と言う程大した立場でもないが)、常々主張の根拠とする所は明らかにしておかねばならないだろうと考えている。ここでは映画を論じることが専らであるが、それに対しても「良い映画」と「悪い映…

【映画解説】主題が持つ二重性、反自覚的なテーマ/ざわざわ下北沢(2000)

8 (Fri). July. 2022 以前現代的な脚本では理性によって導かれた主題を前面に打ち出している点に特徴がある、と述べた記事を書いた。その内容自体は実際に公開された映画に対して適応出来る考え方であって、著しい誤謬は無いと考えているのだが、ある見方か…

【映画解説】ポストプロダクション実態編、ファイナルカットの意味/エルヴィス(2022)

4 (Mon). June. 2022. 7月1日公開されたばかりのバズ・ラーマン新作映画、エルヴィスだがこれまでのバズ・ラーマン映画とは違うーそして従来の映画とも異なるーある問題を孕んだ、物議を醸す映画であった。端的に言ってカットを切りすぎており、信頼された俳…

【映画解説】カメラムーブメント、ズームの意味と機能/イレイザー・ヘッド(1977)

1 (Fri). July. 2022 脚本、編集、時事と記事を続けてきたが、本日は再びカメラムーブメント、中でもズームについての解説だ。一般の観客に最も広く知られている撮影方法がこのズームではないかと思うのだが、実は映画業界では最近あまり使われなくなってき…

【時事】東京オリンピック: Side B を見て(2022)/批評が出来ない批判家たち

29 (Wed). June. 2022 参院選の真っ只中、政治的には何かと騒がしい季節だが、その渦中で更なる論争を呼んでいるのが河瀬直美監督による東京オリンピック2020公式記録映画である。 特に Side B は「東京オリンピックの裏側を明らかにする」と予告で宣伝して…

【時事】東京オリンピック: Side A を見て(2022)/映画を見ない有識者たち

27 (Mon). June. 2022 酷評に次ぐ酷評で興行的にも大失敗している東京オリンピック2022公式記録映画。トップガン:マーヴェリックや映画 五等分の花嫁に及ばないことはある程度想定されたこととして、峠 最後のサムライや妖怪シェアハウスにまで大きく水をあ…

【映画解説】ジャンプスケア(jump-scare)の意味と機能/死霊館(2013)

25 (Sat). June. 2022 本日のテーマは現代ホラー映画、そしてホラーゲームで最も大切な技術となっているジャンプスケアである。ここには先日の記事で解説した視線の一致と誘導が非常に大きく関係している。 近年では何かと批判されることも多いジャンプスケ…

【映画解説】編集の基本、視線の一致と誘導(eye-trace)/聖なる鹿殺し(2017)

24 (Fri). June. 2022 映画の本質は編集にある、というテーゼが一応映画学上では認められている。芸術の本質など時代ごとに変わる曖昧なものでしかなく、特にそれが映画の様な総合芸術では一際曖昧にもなるのだが、それでも映画に対する編集の大切さは十分強…

【映画解説】脚本執筆の失敗例/鑑定士と顔のない依頼人(2013)

20 (Mon). June. 2022 過去3回に渡って脚本が映画内に於いて如何に機能するものか観察してきたが、最終回の本日は脚本の失敗例についてである。 脚本はプロダクションは勿論プレプロの過程で重要な役割を果たし、技術的な程度を保障する上で必要不可欠である…

【映画解説】現代的脚本術に見られる主題の重要性、創造を支配する理性/TITANEチタン(2021)

19 (Sun). June. 2022 既に述べた通り、今日の時事が与える脅威はフィクションのそれを凌駕してしまっている。だからフィクション(それが映画にせよ文芸にせよ)は単に脅威を提出するだけでなく、それを超えて安息や恐怖などの感情を生み出すことに存在意義…

【映画解説】自己破壊的な脚本術、或いは不条理映画/欲望(1966)

17 (Fri). June. 2022 先日の記事に引き続き、本日も脚本について検討する。最も基本的で王道と思われるハリウッド流古典的脚本術から始めて、本日は脚本(物語)を破壊する試みについて見ていこう。 予め断っておかなければならないが、今回は脚本を持たな…

【映画解説】ハリウッド流古典的脚本術/お熱いのがお好き(1959)

16 (Thu). June. 2022 『ル・シッド』論争についてご存知だろうか。古典主義時代の17世紀フランスでピエール・コルネイユが著した劇『ル・シッド』が三単一の法則(時・場所・筋の一致)を無視したことから、両派分かれて展開した議論のことである。 当時の…

お知らせ

14 (Tue). June. 2022 いつも御覧頂きまして大変ありがとうございます。 本日はお知らせが2点ございます。 初めに新しく公式のTwitterアカウントを立ち上げました。 twitter.com 更新状況のお知らせの他、適宜更新していく予定ですので合わせて御覧下さい。 …

【映画解説】ミザンセン(mise-en-scene)の意味と機能/ドリーマーズ(2003)

13 (Mon). June. 2022 カメラムーブメントについて学び、カットとは何か学習した所で、次の様な疑問が浮かんだのではないだろうか。 確かにカメラの動かし方、シーンの切り方は分かった。しかし映画は総合芸術で様々な要素が組み合わされて出来上がっている…

【時事】アカデミー賞という年中行事の価値/蓮實重彦の思想

12 (Sun). June. 2022 筑摩書房が運営するWebサイト上に次の様な記事が載った。 「アカデミー賞という田舎者たちの年中行事につき合うことは、いい加減やめようではないか。」 フランス文学者であり、小説家であり、そして映画評論家として名高い蓮實重彦氏…

【映画解説】カット、ショット、シーン、シークエンスの意味/ヒストリー・オブ・バイオレンス(2005)

10 (Fri). June. 2022 この映画は斬新なカットで面白かった。あのショットはどうやって撮影したんだろう?泣けるシーンがあって、大変感動した。全くつまらないシークエンスがあった。 映画を分析したり批評したりする上ではどれも一般的な表現だが、果たし…

【映画解説】カメラムーブメント、push-inとpull-out/20センチュリー・ウーマン(2016)

8 (Wed). June. 2022 先日の記事に引き続いてカメラムーブメント、特にpush-in shot と pull-out shot について解説する。pull-out shot の代わりに push-out shot という呼称も耳にしたことがあるが、恐らくは誤りだと思われる。少なくとも pull-out shot …

【映画解説】基本のカメラムーブメント、スタティック・パン・ティルト/フラワーズ・オブ・シャンハイ(1998)

6 (Mon). June. 2022 これまで映画の見方、制作過程、そして基本的な映画の形式と続けてきたが以降いよいよ本格的な制作技術について見ていきたいと思う。 一番最初に取り上げる内容はカメラムーブメント、特に基本となる3つのムーブメントについて紹介する…

【映画ニュース】スペイン映画業界研究、映画制作・ロケーションの拠点として

5(Sun). June. 2022 スペイン映画というとどういった映画を思い浮かべるだろうか? オール・アバウト・マイ・マザー、ボルベール<望郷>、REC、オープン・ユア・アイズ、それでも恋するバルセロナ...etc. ハリウッド映画は勿論フランス映画や韓国映画と比較…

【映画解説】映画形式の機能と批評の原則、随伴現象説の意味

3 (Fri). June. 2022 先日の記事を読んで聡明な読者諸氏は1つの疑問を持たれたことだろう。 彼は映画形式としてのスタイルと作家性としての岩井俊二のスタイルを同列に語っているが、両者は別個の存在であるのではないだろうか?詰まり映画が映画であるため…

【映画解説】映画形式、スタイルとジャンルはどう違うのか、脱構築/Love Letter(1995)

1 (Wed). June. 2022 以前「映画は総体として見られなければならない」と書いたと思う。 また「映画のジャンル分けは主に社会学的な観点と、マーケティング上の観点から行われる」とも書いた。 所で映画の総体とか形式、そしてジャンルとは具体的に何を指す…

【映画解説】post-production, ポストプロダクションの意味/告白(2010)

30 (Mon). May. 2022 ウディ・アレンが次の様に語っていたのをよく覚えている。 映画を撮影している時は、いつも自分が大変な失敗をしているんじゃないかとビクビクしている。これじゃ駄目だ。売れる訳が無いってね。それでも編集室に入ってフィルムを繋いで…

【映画ニュース】アートハウス系映画の立ち位置と将来/カンヌ国際映画祭より解説

29 (Sun). May. 2022 カンヌ国際映画祭は昨日閉幕し、パルムドールはリューベン・オストルンドが獲得した。 ラインナップが公表された時点で、アリ・アッバシ予想の管理人だったが、蓋を開けてみると安定の選出の感もあり、却って良かったのではないかと思う…