知らない、映画。

在英映画学部生のアウトプット

【留学】意外と知らない、知らないと苦労するイギリス生活のリアル

8 (Thu). September. 2022

随分更新期間が空いて久しぶりの投稿。NOPEが公開され、ヴェネツィア映画祭が開幕し、ロード・オブ・ザ・リング新作『力の指輪』を巡って揉め.....映画業界はニュースが絶えない中で皆様如何お過ごしだっただろうか。

筆者はと言えばプライベートのあれこれに奔走し、更新どころではなく、まして映画を見るどころでない1ヶ月だった。この1ヶ月で20本も見てないのではないだろうか。筆者にしては異例の少なさである。

そんなこんなで忙しかったが、漸くひと段落し、時間も少しずつ出来たということで本日は軽めの記事から。意外と語られない(少なくとも筆者は渡英前は知らなかった)、けれども知らないと苦労するイギリス生活のリアルについてお伝えしたいと思う。

留学・ワーキングホリデーで訪れる方、駐在予定の方(このご時世いるのか分からないけれど)、移住予定の方は勿論旅行で訪れる方も知っておくべき内容だと思うので是非お付き合い頂ければと思う。

Edward Norton and Brad Pitt in Fight Club (1999)

Superdry・極度乾燥(しなさい)

私が住む街は駅を降りてすぐこちらの店が、日本でも一昔前に流行った店がある。失礼ながら日本で見なくなった時点で一過性のブランドかな、と思っていたのでまだ存在していることに驚いた記憶。

さて何が言いたいかというと、空気が非常に乾燥している。イギリスと言えば雨が多く、晴れの日が少ない。霧も深くなる。そう聞くとどこか乾燥とは縁がない様に考えてしまうというもの。筆者も安直に湿度が高いイメージを持ってイギリスに入った。

場所によっては500mlのミネラルウォーターが400円近くもする国である。そして外食しようと思えばどんな店でも1000円は軽く超えてしまう国である。当然節約したくもなる訳だが、そうすれば必然的にのどが乾き、手先も乾燥する。真冬にジェットヒーターを焚いて温めていた小学校の教室と同じくらいには乾燥する。

この時点では時差ボケで体調が悪いのか?と軽く考えていた筆者だったが、夕方強烈な目の痛みで空気が乾燥していることに気が付く。コンタクトレンズが8時間も持たないのである。渡航後すぐで目薬もしていなかった為、コンタクトを外すしかなく....という状況になって初めて自分の体調が問題ではなく空気が乾燥していたんだな、と気が付いた。

今思えばもっと早く気が付いて良さそうなものだが、ともかくイギリスの空気は非常に乾燥している。季節を問わず夏でも非常に乾燥している。コンタクトで普段過ごされている方は使用時間に注意が必要。朝から観光して、夜遅くパブに行って、というスケジュールを組んでいるのであればメガネを着用するか目薬を用意してくることをお勧めする。乾燥肌の人なども同様に対策をしてから渡英することをお勧めしたい。

Bad Chaismokers, Terrible Manner

ヨーロッパと言えば環境に対する意識が進んでいて、健康意識も高く、添加物や医薬品に対する審査も厳しい。となればタバコなんて目にすることはない筈だ。では現実はどうかというと、確かにコンビニやスーパーでパッケージを見ることはないし、飲食店で喫煙可能な店も殆どない。

けれども路上喫煙に関しては40年分くらい時計の針を逆に回した様な有り様なのである。路上で吸っている人がいる、というレベルの話ではなく何処を歩いても喫煙者に出会う。それこそ1ブロックに2~3人くらいの喫煙者がいるイメージで、30分も散歩すれば最低でも5人の喫煙者には出会うだろう。

そして飲食店で喫煙出来ない分、店先やテラス席に集まって皆でタバコを吸っている。だからパブでは店の中よりも外の席の方が混雑している店もある位で、ロンドンの繁華街の人気店の前では40人から50人くらいがグラス片手にたむろしているのも珍しくない。

これだけでも頭の痛くなる話だが、更に最悪な事に彼らは非常にマナーが悪い。路上で吸う。百歩譲ってそれは良いとして、彼らは吸い殻をそのまま路上に捨てていくのである。だからイギリスの街中はいつでも汚い(これは後にもう少し説明する)。他には筆者が住んでいるフラットの隣のフラットの住人は窓から吸い殻をそのまま投げ捨てている。恐らく部屋に灰皿を準備して吸っているのだろう。フィルターぎりぎりまで短く吸ったタバコの吸い殻が朝起きて外に出てみると綺麗に放射状に散らばっていたのである。路上喫煙には見慣れてきた筆者でも流石に閉口してしまった。

ベビーカーを押しながらタバコを吸っている人も数えきれないくらい見るし、一番驚いた例としてはスーパーにベイプを吸いながらそのまま入ってきた客がいたことだ(ベイプはイギリスでは非常に普及している様で、大きいストリートには2軒から3軒ほどのvape storeがあるし、駅ではsmoking and vaping is not allowedとアナウンスされる)。

日本に居た際には付き合いでタバコを吸ってみたりしていた筆者で、元々タバコに対する嫌悪感は無い方だった。が、イギリスに辿り着いて2日で極度の嫌煙家に様変わりした筆者である。一部の例外を除いてほとんどの日本人は(喫煙者も含め)辟易してしまうのではないだろうか。必然的に大量の副流煙に曝されることにもなるから、喘息持ちの方や子供と一緒の方、出産直後のお母さんなどは渡英を控えた方が良いかも知れない。その程度にイギリスのタバコ問題は深刻である。

一周回って不便なキャッシュレス

ニュースでも事前にキャッシュレス化が進んでいるという話は聞いていたし、日本は現金社会で世界基準では電子化が遅れているという話を耳にした方も多いだろう。実際本当にその通りで、日本とは比べものにならない程度にキャッシュレス化は進行しており、留学が初海外、という状態だった私は文字通り目を丸くしてしまった。

日本ではPayPayなどで払える店も急速に増え、suicaなどの交通系電子マネーは殆ど誰もが利用しているが、これらは飽くまで「オプション」の一つだ。どういうことかと言うと、イギリスでは電子決済以外の支払いが出来ない店も多く、支払い方法の一つとしての電子マネーではなくスタンダードとしての立ち位置を確立してしまっているのである。

初日。イギリスに到着し、ヒースローからロンドン市内へ向かう為地下鉄に乗る必要があるのだが、チケットを買おうと思っても紙幣を入れることができない。硬貨は受け付けているが、硬貨など用意していないし、そもそもzone1(中心部)まで行くのに硬貨だけでは足りない。

ホテルに着き、支払いに紙幣を取り出した所「今どき現金なんて誰も使わないよ」と言われて断られ、併設のラウンジでの支払いも電子マネーのみと言われてしまう。他の店であっても大体似た様なもので「キャッシュ使える?」とこちらから聞かない限り問答無用で電子決済を促されてしまう。観光地のテムズ川周辺でも"NO CASH PAYMENT"と張り紙をした店もちらほら見受けられ、そうでない店に行っても現金は断られることが多かった。

筆者が住んでいる小さい街では問題なく現金が使えるが、ロンドンなど大都市では電子マネーでの支払いが不可欠だと感じた。筆者も羽田空港である程度まとまったお金を準備して貰ってから現地に向かったが、観光で数日滞在する、という方であれば用意した現金は無駄になる可能性が極めて高いと思われる。ロンドンを中心とした観光地を巡るのであれば特に。

デビットカードなどを用意しておくか、モバイルバンクを予め開設するなどして電子決済に対応してから渡英される方が賢明だろう。現金は精々100ポンドもあれば十分過ぎるくらいではないだろうか。電子決済が出来ない店は存在しないから(路上の屋台でさえもキャッシュレスで、現金お断りの張り紙をしている)1ポンドも持たなくとも支払い可能だし、モバイルバンクであれば何処でも無料でキャッシュが引き出せるので、そうした準備をしてから出ないと羽田や成田で用意した現金を大量に持て余してしまうことになるだろう。

キャッシュレス化も進み過ぎて最早不便になってしまっている。

色々と雑

イギリス人は色々と雑。繊細で完璧な仕事に慣れた日本人からすると驚くことばかりで、特に階級意識の残存する先進国イギリス、というイメージを持って訪れるとその驚きも一入。噂には聞いていてもイギリスだから、インドに行く訳じゃないから、という甘い考えで渡英した筆者は痛い目を見ることになった。パッと思いつく限り列挙してみよう。

  • ゴミの回収が気分次第。毎週火曜日に来る筈だが、市の中心部や高級住宅街のゴミが多いと飛ばされることもある。従って家の前に並べたバケツにゴミが溜まっていき、ハエや羽虫が耐えない。リアル・ジョーカーの世界。
  • 網戸がない。ハエが集っている中網戸がない地獄。窓も開けられないし、換気も出来ない。
  • カビ。窓を開けられない為、密閉した室内で生活しているからかカビが何処からともなく湧いてでる。引越してすぐカビ臭い室内に気が滅入りそうになった思い出。リアル・ファイトクラブみたいな家に暮らしている。
  • 土足での生活。正確には掃除のしなさ。カビ臭い家で土足で生活しているにも関わらず、全然掃除もしないし普通にカーペットの上に昨晩のチップスとかが落ちている。ハエが集ってても気にならないイギリス人だからこそ掃除もしないし、タバコも平気で路上に捨てれるのかなと思った。
  • タクシーもバスも電車も時間通りに動かないことが多い(ロンドンは例外。他の都市部は分からないが、筆者の知り合いはロンドンだけと言っていた)。特にタクシーはいい加減で、Uberの様な予約制のタクシーを頼むと時間通りに来ることがないらしい。教えてくれた彼曰くタクシーを取るなら流しに限る、らしい。その延長線上で宅配便や郵便も信用ならない。宅配はイギリス人も呆れる酷さ。
  • 片手鍋半分程度の水が沸騰するまで7分から8分くらい掛かる。しかもガスコンロで。何故かと言えば(TESCOの廉価品を買った筆者の責任だが)鍋の熱効率が異様に悪いから。他にも電圧が安定しないからなのか分からないが、ドライヤーは熱風設定にしていても一定間隔で冷たい風が噴き出てくるし、バスタオルは初回の時点で毛玉でボソボソになっている。詰まりは製品の質が微妙に低く、安定していない。
  • スーパーで売っているアスパラガスがクネクネと曲がっている。人参が袋の中で割れていたり、欠けていたり(寧ろ欠けていない人参の方が珍しい)。何でも完璧に整った日本での生活に慣れきった筆者は先の曲がったアスパラガスに妙なイギリスらしさを感じた。

ザッとこの程度だろうか。列挙してみると随分と酷い国の様だが、決してそうとは限らない。人によってはこうした雑さに耐えられない人もいるだろうが、3日も暮らせば意外と慣れるものである。筆者が耐えられないのはタバコくらい、おまけにもう一つ述べればタオルケットがないことぐらいである。それ以外のことは大概我慢できる。ただ筆者の様に何らの心構えもなく渡英してしまうと、心が折れたりホーム・シックになってしまう方もいるかも知れない。素敵な写真や動画の裏にはリアルな汚らしいイギリス生活があるのである。

それからイギリスなんかに足を向ける予定の無い諸氏へ。日本は中々に素晴らしい国である。と書くとありきたりだが、考えてみて欲しい。どれだけ安く高品質な製品が届けられるか、日夜真剣に研究開発がなされ、おかげで百円ショップやコンビニでも驚くほど高品質の商品を手に出来るのである。筆者がイギリスの百均(正確には1ポンド均一)で買ったタッパーは一度開けたら二度と蓋が閉まらなくなった。よく店頭で閉まって並べられていたなと感心するくらい、びっくりする程噛み合わなくなってしまった。一度も使っていない、ただ蓋を開けてみただけのタッパーが。

という訳で日本はそれだけの誠実さと勤勉さがある国なのである。円が多少安くともと政治家が信用ならなくとも、たとえ子供の数が少なくとも、それでも十分これからも成長していける国だと思う。G7と言って肩を並べておきながらタッパー一つまともに閉まらない国もあるのだから。

某TV局のコンビニなりチェーン店なりの商品をプロがジャッジする企画。あの様な番組はこの国では成立する筈がない。何故ならどの商品も雑に作られているどころか、より良い商品を、という改良すら恐らくされていないからである。この価格ならこの質、という所がしっかり決まってしまっているのだ。

ということでイギリスに出向く予定の方には待ち受けるトラブルを、予定のない方には海外から見た日本の姿を感じて頂けたら嬉しい。次回からは映画関連の内容に戻る予定だが、こうして度々イギリス関連の内容も投稿出来ればと思う。