知らない、映画。

在英映画学部生のアウトプット

【留学情報】留学前に考えなければならないあれこれ

20 (Fri). May. 2022

日本の学術界において映画研究というジャンルは確立していないと感じられる。特に学士過程で学んんでいる学生にとって映画研究に取り組むことは難しいだろう。

文学部に進学して映画を物語形式の1つとして勉強するか、フェミニズム研究の一環として勉強するか、包括的な研究は何れにしても容易ではない。高校を卒業したばかりの学生が一から自力で全て取り組むにはハードルが高いと言って良い。

まして映画制作を志す学生、詰まり映画の機能と技術を学びたい学生にとっては環境が全く整っていない。繰り返しになるが、学ぶ場としての大学は選択肢として保障されているべきだ。自力でカメラを持って現場に出ろと全ての学生に、特に裕福でない学生に強いるのは間違っていると思う。

そこで海外の大学という考えが登場する訳だ。管理人の経験上映画学部に偏った話になってしまうとは思うのだが、留学を検討する上で考慮しなければならない2、3の事柄について述べたい。

George Clooney in Up in the Air (2009)

留学のメリット

初めにここで言う「留学」とは、学部生の正規留学を意味する。短期や中期の語学留学及び交換留学、そして修士課程や博士課程に属する学生の留学は含まない。前者については後述する。また修士課程以降の学生の留学は純粋に学術的な要件によって決定されるはずであり、これから述べる事情は参考にならないだろうからである。

さて留学における最大のメリットは求める環境が整っていることである。管理人の場合は映画研究であったが、例えばポーランド史の研究、ヴュルツブルク魔女裁判の研究、宇宙工学など特定の専門領域に関心があり、そしてその研究が日本で活発でない場合留学は考えるべきオプションだ。

裏を返せば、そうした特定の領域の定まっていない状態で留学をするメリットは大きくない。確かに語学の勉強であったり、将来に対する知見を深める意味で収穫は多いだろうが、率直に言って費用対効果の面で大きな損失だと思う。資金が潤沢にある富裕層にはそんなことは関係ないのかも知れないが。

整理しよう。

日本で研究することは難しいが自分が取り組みたいテーマ(ex. 映画制作)があったとして、それを自力で勉強する(カメラや編集ソフト等を自費で購入し、自学する)場合と、留学をした場合の費用面や、効果の面でプラスが多いのか少ないのかを判断するべきだということだ。

更には就職面でも大きなアドバンテージとなる。例えばフランスの出版社に勤務したいと考えていたとする。日本でフランス文学を修めた後就職活動をする場合と、フランスで書誌学を修めた後就職活動をする場合では後者の方が夢に近づける可能性は比較的高いだろう。それは日本の大学のレベルが低いということではなく、業界とのパイプがあったり、既に大学の評価が確立しているからだ。

留学をすることで就職の際の選択肢は増える。それはメリットの1つと言える筈だ。また誰もが同じ容姿で、同じ服装をし、同じ受け答えをすることを求める就活方式を採用している企業の中には、留学経験ありと書いただけでアドバンテージをくれる企業もあることだろう。これも場合によってはメリットとなる。

この様に自分が何を求めて留学したいと考えているのか、この点は明確にすべきだ。そして求めるニーズが海外にしかない場合、あるいはそちらの方がより良い場合、留学は検討するべきだろう。

語学留学・短期留学について

管理人個人の意見としては、語学留学は一部の特殊な例を除いて不必要だと思う。

イギリスの大学に実際に通うまで、管理人は一度も海外に行ったことはなかった。全く海外経験もなく、ベースの側に暮らしていた訳でも、親が語学に堪能だったわけでもなかったが、自力の勉強で英語に関しては殆ど問題なく運用できる様になった。それも中学や高校の授業と、家での自学のみでである。塾やら何やらの助けも借りていない。

だから語学というものは、ある程度のレベルまでは自力で上達出来るものだと思うし、その為に何百万円ものお金を費やすことは些か勿体無いと思う。管理人はフランス語も少々勉強していたのだが、その経験から英語以外の言語でも事情は大きく変わらないだろうと言える。語学は自学で上達出来るものであり、特に英語に関しては高校までの授業で十分事足りるのだ。わざわざ語学の勉強で留学する必要性は大きくないと思う。

まして英語を学ぶために留学するというのはナンセンスである。人によってはこの表現に嫌悪感を覚えるかも知れないが、ご了承頂いて、先を読んでみて欲しい。

先日NHKの番組で、複数の国の学生の対話を特集した番組があった。アメリカの学生が英語で話すのは当然なのだが、中国の学生も英語で受け答えをしていた。その中で日本の学生だけが日本語で答弁し、通訳してもらっていたのである。何とも恥ずかしいことだと思った。

別の例である。レア・セドゥやペネロペ・クルスシャルロット・ゲンズブールなど非英語圏の俳優も英語で出演し、アクセントが殆ど気にならない様な上手な英語で演技をしている。昨今の映画界の多様化でこの傾向は推し進められる一方で、非英語圏出身のハリウッド俳優は枚挙にいとまがない。またラース・フォン・トリアーエレメント・オブ・クライムを監督する際、作品により普遍性を持たせる為に英語での撮影にこだわったという。非英語圏の制作現場でも、英語で撮影されるケースは多くなっている。

詰まり、今や世界的に英語が出来るということは当たり前になりつつあるのだ。

殆どのジャンルの、どの国の情報であっても基本的には英語でやり取りされている量が最も多い。特殊性・専門性の高い内容を除いて、大方の情報は英語で世界的に発信される場合が多いのである。その中で英語を学ぶために留学に来た、というのは自国の文化が世界基準の最先端に進化していないことを公言している様なものではないだろうか。

日本語や日本の文化に愛着があればこそ英語を学ぶべきだと思う。言語的な力が英語に集中している現状を批判することも正当だが、歴史的にもいつの時代にも公用語というものはあった。あなたがどの様な考え方を持っているにせよ、それを表現出来なければ何も始まらないのである。

今の世界は英語を使うことを求めているのだから、そのルールには従わなければいけない。泥棒に遭ったとしても、相手から盗み返すわけにはいかない。きちんと裁判で公正な手続きで、返還・賠償してもらう。それがルールだ。不満があっても、批判したくても、先ずはルールに則って行動しなければならない。

だからこれだけ英語が広く浸透した今日、英語の勉強「だけ」をしに海外まで行く必要性があるかどうかは疑問なのである。

また短期留学に関しても同様だ。基本的に日本で研究上の不都合がないのであれば、日本の大学に留まっていかなる問題があると言うのだろうか。短期留学と言えども費用は安くないのである。往々にして現地の空気を感じて、楽しむことに終始しかねない短期留学で、本当に事前に求めていた必要な見聞を得ることが出来るだろうか。

まとめ

  • 留学の目的は明確だろうか?
  • 本当にその体験は留学することでしか手に入らないのであろうか?
  • 日本に留まっていてはできない経験が得られるのか?
  • 費用対効果はプラスであるか?
  • 語学(特に英語)が十分に運用でき、現地で満足に学べる自信があるのか?
  • 将来に結びつくはっきりとしたプランがあるのか?
  • 期間は適切で、自分の求める体験が適切に得られるのか?
  • 以上全てが明確で周囲(学生であれば親や指導教員)を納得させる説明ができるのか?

 

これらの質問に全てYesと答えられた時には、それはあなたが十分に準備が出来ていて、留学をするべきだということだと思う。実際の志望校選定であったり、受験の対策を進めて欲しい。

上に述べたこと全てに納得されない方もいると思う。ただ管理人が留学する際にはこれらのことを考えたし、発信の場のブログで、自身の必要だと思った要素について書かせて頂いている。あくまで管理人個人が留学をしたいなら、これは考えておかないといけないな、と思った内容だと理解して頂きたい。